大聖堂の影響 ―― その1


■ 八角の段

☆大聖堂のドーム

安土城と言えば、昔から異論が無いのが、5階部分の、八角の段です、6階の四角の段と、屋根裏のこやの段という、四角形の部分に挟まれて八角の部分が存在する建物は、日本や中国でも、安土城以外では存在しない(と思う)ので、この形態は、大工や知識人の発案ではなく、信長個人の発案と考えられます。

では、どうしてこの形なのでしょうか、

仏画が描かれている事から、仏教とのかかわりが指摘されていますが、仏教だからといって、八角にしなければならない理由は存在しない上に、仏教の八角円堂は普通、葬堂として造られ使われるものなので、生前に作るのはおかしく、上に部屋を作った場合死後に頭上を踏みつけられる事になるので、仏教的な意味で八角形を採用したのでは無さそうです。

吉田神社の大元宮から、と言う説もありますが、吉田神社は、完全な数としての八角形を採用しているので、その上に四角形を乗せるのは、これもおかしいものです。

中国思想では、天を円、地を四角で表す考え方がありますが、これでは、最上階が八角でなければなりません。  このような理由から、八角形の謎は解き明かされては来ませんでした。

ところがこの謎が、天守指図を読む事によって、解消される事に気がつきました。
天主指図が、他の城と明らかに違う部分に、
1.吹き抜けがある  
2.吹き抜け中央に宝塔がある
3.1階に(信長をまつった)盆山の間がある
4.2階に舞台がある
5.3階の吹き抜け部分に通路や橋がある
6.5階が八角形をしている
7.6階が金箔張り{鐘が釣られていると言う資料も有る}
といった点が、あげられます。

これら、他の天守建築では見られない安土城の特徴のすべては、キリスト教の大聖堂が持つ特徴と、共通点があり、言葉の上では、安土城は大聖堂と言っても過言では有りません。
大聖堂は一般的に、
1.吹き抜けがあります
2.吹き抜け中央に天蓋付きの祭壇があります
3.周囲の壁龕に聖人や聖遺物が祀られています
4.2階にパイプオルガンと楽士、合唱隊のステージがあります
5.吹き抜け上部に、ギャラリーやバルコニーといった通路が廻っています
6.ドーム(八角形もある)が乗っています
7.ドームの上に、小塔が乗っていて、鐘が釣られる事や屋根が鍍金される事もあります。

さて、これらの安土城にしか見られない特徴がすべて大聖堂の持つ特徴と一致することを考えると、天守指図に描かれる安土城は、大聖堂を模して作られたと考えざるを得ません。 江戸時代の、鎖国禁教令下の加賀藩の大工に、これほどまでのキリスト教の大聖堂に関する知識があるとは考えにくいので、この図面は、宣教師に親しかった信長の時代に描かれた物と考えられます。

信長と宣教師の関係で考えると、安土城に先立つ、岐阜城在城当時に宣教師がやって来た時、信長は岐阜城に新築した御殿について、「西洋の建物に比べて見劣りがするだろうから見せたほうがいいか・・・」 などと言っているのに対し、安土城は平気で見せている事から、信長にとって安土城は、西洋建築に劣らない自信があったと考えられ、 また 信長の知っている西洋の情報は、すべて宣教師によってもたらされ、さらに、宣教師の知っている一番豪華な建物は、大聖堂なので、 ヨーロッパに負けない建築を、信長が志向したときに、出来上がった建築が大聖堂に似てしまうのは避けられなかった、 と思われます。

ということで、安土城の八角の段は、信長が、神の家である大聖堂について、宣教師に聞いたときに、宣教師が答えたドームについての説明を、日本語に約した{建物の上の丸い屋根}というのを、丸い屋根=八角円堂 と、理解したために八角円堂(法隆寺の夢殿)の形式で作ったと思われ。 その上の四角の段は、{最上部が鐘楼になっている}と、聞いたために、奈良の寺院に見られる、重層の日本風鐘楼のイメージで、四角形で、屋根が伝統的な楼閣建築の定法の宝形ではなく、入母屋に作られた、と 考えられるので、 八角形とその上の四角形の謎を、すんなりと説明することができます。

大聖堂のドームの中にも、フィレンツェの様に、八角形のドームが存在しているので、(八角形の)ドーム=八角の段とも、考えられます。

最終更新日時
2003/03/04 (火)
22:24:15

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■大聖堂

八角の段
最上階の鐘
宝塔・蛇石

宝塔前の部屋
金灯篭・盆山間
舞台と橋

番外編
不等辺八角形



■安土城
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