第六天魔王 その1
だいろくてん まおう
ルイスフロイスの記事に出てくる、信長が称した第六天魔王とは、6番目の天界である第六天に住んでいる魔王という事なのですが、6番目の天界とは何処にあるのでしょうか?、また、一般に天界といえば良い世界というイメージがあるのですが、なぜ其処に魔王が住んでいるのか、仏教の宇宙観からみていきます。
■ 仏教理論による世界の構造
☆ 風輪(ふうりん)、水輪(すいりん)、金輪(こんりん)
仏教の宇宙観では、先ず、何もない虚空(こくう)の中に、気体で構成される風輪(ふうりん)が浮かんでいるとかで、風輪の形は円盤状で、大きさが、円周が無数由旬
(1056X1由旬)、厚さが160万由旬。 無数というのは、仏教語で、数えられないという意味の阿僧祇(あそうぎ)の位の事らしいので、1056にあたるとか、 1由旬(ゆじゅん)は長さに異説があって、7Km〜15Km、ほどらしいので、短かめに見積もって、1由旬=7Kmとすると、
風輪の直径 23,551,613,873,479,400,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000Km
風輪の厚さ 11,200,000Km
この平たい円盤状の気体である、風輪の上に、液体で構成される水輪(すいりん)が乗っていて、水輪の大きさは、円筒状で、直径が120万3450由旬で、厚さが80万由旬。 kmに直すと。
水輪の直径 8,424,150km
水輪の厚さ 5,600,000km
この円筒状の水輪の上に、固体で構成される金輪(こんりん)が乗っていて、直径は水輪と同じ、120万3450由旬で、厚さが32万由旬。 kmに直すと。
金輪の直径 8,424,150km
金輪の厚さ 2,240,000km
この金輪の上が大地になっているそうだが、現在推定されている宇宙と、大陽・地球の直径が
宇宙の直径 300,000,000,000,000,000,000,000km
太陽の直径 1,400,000km
地球の直径 12,000km
なので、風輪は宇宙より大きく、金輪は地球よりはるかに大きい事になって実際の宇宙と比べると相当矛盾しているのだが、まあそのへんは宗教って事で・・・。
☆ 九山八海(くせんはっかい)
さて、その金輪の中心には、須弥山(しゅみせん)と呼ばれる山が聳え、須弥山は七重の山(七金山)と山に挟まれた回廊状の淡水の海に囲まれているそうだ。 その七金山の外側に海水でできた大海があって、この須弥山を取り囲む大海に浮かぶ四つの大陸が、南の贍部州(せんぶしゅう)、東の勝身州(しょうしんしゅう)、西の牛貨州(ごかしゅう)、北の倶盧州(くるしゅう)、といわれ、人間の住んでいるのは、南の贍部州、別名、閻浮提(えんぶだい)で、閻浮提の形は三角形に近い台形で、大きさが、上辺が2000由旬、下辺が3.5由旬、斜辺がそれぞれ2000由旬であるとか。
閻浮提 上底 14.000km
閻浮提 下底 24.5km
閻浮提 斜辺 14.000km
閻浮提の大きさですら、地球の直径より大きいのも、ご愛嬌ってことで・・・。
この三角形に近い台形の島の上に人間が住んでいて、地下の金輪内部には地獄世界が広がっていて、地獄の果ての、金輪の底が金輪際(こんりんざい)と言われるそうだ。
また、その海水でできた大海の外側、金輪の円筒の一番外側には金剛輪山と呼ばれている山が廻っていて、中心の須弥山と周囲の七金山・外側の金剛輪山を合わせると、山の数が合計9個、取り囲む海が合計8個ある事になるので、この金輪上の世界の事を、九山八海と呼ぶそうだ。
☆ 須弥山(しゅみせん)
金輪の中心にそびえる、須弥山の、水上に出ている部分は、正立方体の形をしているそうで、どの辺も長さ8万由旬(560,000km)あり、その立方体の下半分に四天王とその配下が住んでいるとか。
この住みかは4階建で、四周にベランダ?が張り出していて、1層目が、水面から1万由旬の高さのところで、1万6千由旬外へ張り出している。 2層目は、さらに1万由旬高く、これは8千由旬外へ張り出していて、3層目は、さらに1万由旬上で、4千由旬張り出し、4層目も、さらに1万由旬上で、2千由旬張り出している。 この4層目の東に持国天(じこくてん)、西に広目天(こうもくてん)、南に増長天(ぞうちょうてん)、北に多聞天(たもんてん)、が住んでいる。 須弥山のここまでの部分が、四大王衆天(しだいおうしゅてん)、別名下天(げてん)と呼ばれる天界で、下天の1日は人間界の50年にあたる。 信長の好んだ、敦盛の舞の中の、「人間五十年下天の内をくらぶれば夢幻の・・・。」というのは、ここから取られている。
須弥山の頂上には忉利天(とうりてん)と呼ばれる「三十三天の住処」があり、須弥山頂上の中央に「善見(ぜんけん)」という名の都城がある。一辺の長さ2500由旬(17,500km)の正方形で、高さ1由旬半(10.5km)である。建物は金ででき、地面は綿(雲?)のようなものでできている。
この善見城の中央に殊勝殿(しゅしょうでん)という、一辺の長さ250由旬(1,750km)の正方形の宮殿が建っていて、この殊勝殿に三十三天中の第一人者、天主とも呼ばれる、帝釈天(たいしゃくてん)が住んでいる。
☆ 三千大千世界(さんぜんだいせんせかい)
須弥山上空にも天界がありますが、詳細は後にまわして・・・。
世界の最上階が、悟りの一寸手前の世界、ほんの少し煩悩が残る世界で、有頂天といいます。 「うまくいった喜びで夢中になっていること」「得意の絶頂」という意味に転用されています。
以上、風輪(ふうりん)から、有頂天(うちょうてん)に至る世界をまとめて、一須弥界または小世界、と言い、
小世界が1,000個集まって構成されているのが小千世界。
小千世界が1,000個集まって構成されているのが中千世界。
中千世界が1,000個集まって構成されているのが大千世界というとか。
この、合計で1000×1000×1000=10億の世界全体を纏めて、三千大千世界という。 この全宇宙に君臨する最高位の如来が、奈良の大仏でおなじみの毘盧舎那仏(びるしゃなぶつ)で、梵網経に拠れば自らの分身として100億の釈迦を顕し、此処の国に於いて説法をしているそうだ。
■ 第六天魔王
☆ 欲界の支配者
先ほど説明した、風輪(ふうりん)から、有頂天(うちょうてん)に至る、一須弥界または小世界、の中は、状態によって、欲望の世界である欲界と、欲が無く形のみ存在する色界、形が無く精神だけの無色界という、三つの世界(三界 さんがい)と。 天・人・修羅・餓鬼・畜生・地獄の六つの状態(六道ろくどう)に分れていて、三つに分かれた三界の中の、人間が所属している欲界の最高位にあるのが他化自在天で、6番目の天界なので第六天とも称され、この第六天の最高位にいる、つまり欲界全体を支配しているのが第六天魔王(別名
他化自在天主)というのだそうだ。
なお、この三界の中の、欲界と色界の中間に、徳川家康の安土滞在時の宿舎となった建物と同じ名前の、「大宝坊」だいほうぼう、があるとか。
☆ 一須弥界(小世界)の中の、第六天の位置
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最終更新日時
2003/01/13 (月)
22:55:19
■ 宗教
■安土城
復元案
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☆ 須弥山上空の天界
夜摩天 兜率天 楽変化天
帝釋天の住んでいる須弥山上空には空居天(くうごてん)とよばれる、天界が浮かんでいます。 イメージで言えばラピュタのような感じでしょうか?。 地上から16万由旬(1,120,000km)上空に、人類最初の死者である閻魔大王(えんまだいおう)の作った夜摩天があります。この夜摩天は、常に光が満ち溢れ、蓮の花の開花で時を知り、豊かな自然にみちあふれる楽園、だそうだ。
その夜摩天の上空、地上から32万由旬(2,240,000km)の場所に、弥勒菩薩(みろくぼさつ)のいる兜率天が浮かんで居ます。 兜率天は、内院と外院に分かれ、外院には一般の?天人が住み、内院には中央に弥勒菩薩が説法をしている摩尼宝殿(まにほうでん)があり、摩尼宝殿の四周に各々十二の院があり、合計すると兜率内院には四十九院があって、それぞれの院で、仏が説法をしているそうだ。 釈迦も地上に下生する前はここに住んでいたとか。
兜率天の上空、地上から64万由旬(4,480,000km)には、楽変化天が浮かび、ここの住人は、思いのままに、自ら楽しい境遇を作り出して楽しんでいるとか。
☆ 他化自在天 (第六天)
楽変化天の上空、地上から128万由旬(8,960,000km)の上空に、6番目の天界である他化自在天が浮かんでいます。 この他化自在天では、望む事はすべてかなえられ、望みうる最高の快楽が、自由自在に得られる世界で。 ここの住人は、他人が楽しむ事を自ら楽しむ、つまり、周囲の人々を幸せにすることを楽しむ世界だそうだ。 で、この天界の主である他化自在天王は、天界・人間界はおろか、地獄界までを含めた欲界全体にわたって、自由自在に楽しみを与え。 欲界の衆生が楽しむ事を楽しむという、非常に高尚な趣味を持っているらしい。
天界人の楽しみ方一覧表 |
他化自在天 たけじざいてん (第六天だいろくてん) |
他人を楽しませる事を楽しむ |
楽変化天 らくへんげてん (化楽天 けらくてん) |
自分で楽しみを作り出す |
兜率天 とそつてん |
宇宙の法則を楽しむ |
夜摩天 やまてん (耶摩天) |
自然を楽しむ |
忉利天 とうりてん (三十三天) |
秩序を維持する事を楽しむ |
四大王衆天 しだいおうしゅてん (下天 げてん) |
敵と戦って世界を守る事を楽しむ |
☆ なぜ魔王と呼ばれるのか
欲界の衆生を、自由自在に楽しませる事を楽しむ、すごくいい人のように思われる、他化自在天王が、なぜ、仏教で第六天の魔王と呼ばれるのかと言うと。 仏教の教えによって、人々から欲望が無くなると、楽しませるべき欲界の人が、色界や無色界に移って、なかなか欲界に戻ってこなくなり。 更にすすんで全ての人々が悟りをひらいてしまうと、欲界から人がいなくなって、人が楽しむ事を楽しむ他化自在天の人は、楽しむ事が出来なくなってしまうために、仏教がひろまる事を妨害するそうだ。 また、他化自在天王のあたえる一時的な快楽が、人々の欲望をかきたて、六道の苦しみから逃れる根本的な解決策である、悟りを開くための仏道修行を忘れさせる事から、第六天魔王と呼ばれるらしい。
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