信長公記  しんちょうこうき


■  巻九  ■

太田和泉守これを綴る    天正四年丙子

(前略〜安土御普請の事、の後、四月から七月までの、二条殿の普請や、天王寺合戦の記事〜)

■ 安土の御普請首尾仕るの事

安土山御天主の次第
石くらの高さ、十二間余りなり。 石くらの内を一重土倉に御用ひ、是より七重なり。
二重石くらの上、広さ北南へ廿間、西東へ十七間、高さ十六間ま中有り。 
柱数二百四十本立。本柱長さ八間、ふとさ一尺五寸・六寸四方、一尺三寸四方木。 
御座敷の内、悉く布を着せ、黒漆なり。

西十二畳敷、墨絵に梅の御絵を、狩野永徳に仰せつけられ、かゝせられ候。何れも、下より上まで、御座敷の内、御絵所、悉く金なり。
同間の内に御書院あり、是れには遠寺晩鐘の景気かゝせられ候、其の前にぼんさんヲをかせられ。 
次の四でう敷、御棚に鳩の御絵をかゝせられ候。 
又、十二畳敷、鵝をかゝせられ、則ち 鵝の間と申すなり。 
又其の次 八畳敷、 
奥四でう敷に雉の子を愛する所あり。 
南に又 十二畳布、唐の儒者達をかゝせられ、 
又八でう敷あり。 
東は十二畳敷、次に三でう布、
その次に八でう敷、御膳拵え申す所なり。 又其の次に八畳敷、是れ又御膳拵え申す所なり。
六でう敷 御南戸、又六畳敷、何れも御絵所金なり。
北の方に御土蔵あり。
其の次御座敷、廿六でう敷、御納南戸なり、。
西は、六でう敷、 次十でう敷、 又其の次十でう敷、 同十二畳敷。
御南戸の数七つあり、是の下に金灯爐置かせられたり。

三重め、 十二畳敷、花鳥の御絵あり、則ち花鳥の間と申すなり。
別に一段、四でう敷の御座の間あり、同花鳥の御絵あり。
次、南八畳敷、賢人の間に、ひょうたんより駒の出でたる所あり。
東は、麝香の間、八畳敷、
十二でう敷、御門の上、
次、八でう敷、呂洞賓と申す仙人、并に、ふえつの図あり。
北廿畳敷、駒の牧の御絵あり。
次に十二でう敷、西王母の御絵あり。
西、御絵はなし。御縁二段広縁なり。
廿四でう敷の御南戸あり、口に八でう敷の御座敷これあり。
柱数百四十六本立なり。

四重め、西十二間に、岩に色々木を遊ばされ、則ち、岩の間と申すなり。
次、西八畳敷に龍虎の戦ひあり。
南十二間、竹色々かゝせられ、竹の間と申す。
次に十二間に、松ばかりを色々遊ばされ、則ち松の間と申す。
東は、八畳敷、桐に鳳凰かゝせらる。
次、八畳敷、きょゆう、耳をあらへば、そうほ、牛を牽いて帰る所、両人の出でたる故郷の体。
次に、御小座敷七畳敷、でいばかりにて、御絵はなし。
北は、十二畳敷、是には御絵はなし。
次に十二でう敷、此の内、西二間の所に、てまりの木、遊ばさる。
次に八畳敷、庭子の景気、則ち、御鷹の間と申すなり。
柱数九十三本立。

五重め、御絵はなし。
南北の破風口に四畳半の御座敷、両方にあり、 こ屋の段と申すなり。

六重め、八角四間あり、 外柱は朱なり、内柱は皆金なり。
尺尊十大御弟子等、尺尊成道御説法の次第、御縁輪には餓鬼ども、鬼どもかゝせられ、
御縁輪の、はた板には、しゃちほこ、ひれう、を、かゝせられ、高欄ぎぼうし、ほり物あり。

上七重め、三間四方、御座敷の内、皆金なり。
四方の内柱には、上龍下龍。 天井には天人御影向の所。
御座敷の内には、三皇五帝、孔門十哲、商山四皓、七賢、などをかゝせられ、
ひうち、ほうちゃく、数十二つらせられ、
狭間戸鉄なり、数六十あり、皆黒漆なり。
御座敷の内外柱、惣々、漆にて、布を着せさせられ、其の上、皆黒漆なり。

上一重のかなぐは、後藤平四郎仕り候、京・田舎衆、手を尽し申すなり。
二重めより、京の、だい阿弥、かなぐなり。
御大工、岡部又衛門。 漆師首、刑部。 白金屋の御大工、宮西遊左衛門。
瓦、唐人の一観に仰せつけられ、奈良衆焼き申すなり。 御普請奉行、木村二郎左衛門。

抑そも、当城は、深山こう〜として、麓は歴々甍を並べ、軒を継ぎ、光り輝く御結構の次第、申すに足らず。 西より北は、湖水漫々として、舟の出入みち〜て、遠浦帰帆、漁村夕照、浦〜のいさり火。 湖の中に、竹生島とて名高き島あり、 又、竹島とて、峨々と聳えたる巌あり。 奥の島山、長命寺觀音、暁夕ノ鐘ノ声、音信レテ耳ニ触ル。 海より向ふは、高山比良の嶽、比叡の大嶽、如意がたけ。 南は里〜、田畠平〜、富士と喩えし三上山。 東は觀音寺山。 麓は海道往還引き続き、昼夜絶スト云ふ事なし。 御山の南、入江渺々として、御山下、門を並べ、籟の声 生便敷。 四方の景気、其の数を尽し、御殿 唐樣を学ぶ。 将軍の御館、玉石を研き、瑠璃を延べ、百官快く貴美を尽し、花洛を移さる。 御威光・御手柄、勝げて計ふべからず。


(後略 〜この後、天正4年11月の記事が続く〜)

最終更新日時
2003/06/01 (日)
20:17:28

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