信長公記  しんちょうこうき


■  巻十五  ■

太田和泉守これを綴る    天正十年壬牛



■ 御出仕の事

正月朔日、隣国の大名・小名・御連枝の御衆、各在安土候て、御出仕あり。百々の橋より惣見寺へ御上りなされ、生便敷群集にて、高山へ積み上げたる築垣を踏みくづし、石と人と一ツになりてくづれ落ちて、死人もあり。手負は数人員を知らず、刀持ちの若党どもは、刀を失ひ、迷惑したる者多し。
一番、御先、御一門の御衆なり。二番、他国衆。三番、在安土衆。
今度は、大名・小名によらず、御礼銭百文づゝ、自身持参候へと、掘久太郎・長谷川竹両人を以て御触れなり。惣見寺毘沙門堂御舞台見物申し、おもての御門より三の御門の内、御天主の下、御白州まで祗侯仕る。爰にて面々御詞を加へられ。先々次第の如く、三位中将信忠卿、北畠中将信雄卿、織田源五、織田上野守信兼、此の外御一門歴々なり。其の次、他国衆。各、階道をあがり御座敷の内へめされ、忝くも、御幸の御間拝見なさせられ候なり。御馬廻・甲賀衆など御白州へめされ、暫時逗留のところ、「御白州にて皆々ひゑ候はんの間、南殿へ罷り上り、江雲寺御殿を見物仕り候へ」と上意にて、拝見申し候なり。
御座敷、惣金、間毎に狩野永徳に仰せ付けられ、色々様々あらゆる所の写絵、筆に尽くさせられ、其の上、四方の景気、山海・田圃・郷里、言語道断、面白き地景申すに計りなし。
「是より御廊下続きに参り、御幸の御間拝見仕り候へ」と御諚にて、かけまくも忝き、一天万乗の主の御座御殿へ召し上せられ、拝濫に及ぶ事有りがたく、誠に生前の思ひ出なり。
御廊下より御幸の御間、元来檜皮葺、金物日に光り、殿中悉く惣金なり。何れも、四方御張り付け、地を金に置き上げなり。金具所は悉く黄金を以て仰せ付けられ、斜粉をつかせ、唐草を地ぼりに、天井は組入れ、上もかゞやき下も耀き、心も詞も及ばれず。御畳、備後面、上々に青目なり、高麗縁、繧繝縁、正面より二間の奥に、皇居の間と覚しくて、御簾の内に一段高く、金を以って瑩き立て光り耀き、衣香当りを撥ひ、四方に薫じ、御結構の所有り。東へ続いて、御座敷幾間もこれあり。爰には御張付、惣金の上に、色絵に様々かゝせられ。
御幸の御間拝見の後、初めて参り候御白州へ罷り下り候ところに、「御台所の口へ祗侯候へ」と上意にて。御厩の口に立たせられ、十疋宛御礼銭、忝くも信長直に御手にとらせられ、御後へ投げさせられ。他国衆、金銀・唐物、様々の珍奇を尽し上覧に備へられ、生便敷様躰申すに足らず。


(中略 〜天正10年1月15日の爆竹の記事 〜 5月11日四国攻めの準備 〜)

■ 家康公穴山梅雪御上洛の事

(略 〜)
五月十五日、家康公、ばんばを御立ちなされ、安土に至りて御参着。御宿大宝坊然るべきの由、上意にて、御振舞の事、惟任日向守に仰せ付けられ、京都・堺にて珍物を調へ、生便敷結構にて、十五日より十七日まで、三日の御事なり。 

(中略 〜中国攻めについて、〜天正10年5月17日に光秀が坂本に帰った記事 〜)

■ 幸若太夫・梅若太夫の事

五月十九日、安土御山 惣見寺において、幸若八郎九郎太夫に舞をまはせ、次の日は、四座の内は珍しからず、丹波猿楽、梅若太夫に能をさせ申さるべき旨上意にて、家康公召し列れられ候衆、今度、道中辛労を忘れ申す様に、見物させ申さるべき旨上意にて。
御桟敷の内、近衛殿・信長公・家康公・穴山梅雪・長安・長雲・友閑・夕庵。
御芝居は、御小姓衆・御馬廻・御年寄衆・家康公の御家臣衆ばかりなり。
初の舞は大職冠、 ( 略 〜 )

■ 家康公・穴山梅雪、奈良・堺、御見物の事

五月廿日、惟住五郎左衛門・掘久太郎・長谷川竹・菅屋玖右衛門 四人に、徳川家康公 御振舞の御仕立仰せ付けらる。
御座敷は高雲寺御殿、家康公・穴山梅雪・石河伯耆・酒井左衛門尉、此の外、家老の衆に御食を下され、忝くも、信長公御自身、御膳を居ゑさせられ、御崇敬斜ならず。   ( 略 〜 )


最終更新日時
2003/01/13 (月)
22:55:19

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